「会社員のままでいいのか、それとも個人事業主に挑戦すべきか…」
「自由な働き方に惹かれるけど、収入や安定面が不安で踏み出せない…」
そんな葛藤を抱えている方にとって、「会社員と個人事業主、どっちが得?」という問いは、人生を左右する大きなテーマかもしれませんね。
この記事では、単純な比較では見えにくい両者の違いを、「収入・安定・自由度」という3つの観点からわかりやすく整理しています。
正しい知識を得ることで、自分にとって本当に「得」と言える働き方を見つけられるはずです。
この記事では、将来の働き方に悩んでいる方に向けて、
- 会社員と個人事業主の違いや特徴
- 税金や保険、年収別のシミュレーション
- それぞれに向いている人の特徴と判断基準
上記について、筆者の会社員から独立した経験を交えながら解説しています。
あなたの大切な人生だからこそ、自分に合った働き方を見つけるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
「会社員」と「個人事業主」それぞれの働き方の違いとは?
「会社員」と「個人事業主」では、働き方のスタイルや求められる責任の範囲が根本的に異なります。
会社に雇われて働く会社員は、安定した給与や福利厚生が保証される一方で、働き方の自由度は限定されます。対して、個人事業主は自らの裁量で働ける反面、収入の不安定さや社会保障の面で自助努力が求められます。「どっちが得か」を考える際には、こうした働き方の根本的な違いを理解することが第一歩となります。
以下では、「定義」「責任と自由度」「ライフスタイルへの影響」という3つの観点から、それぞれの働き方の違いを具体的に見ていきましょう。
定義の違い:雇用される vs 自ら事業を営む
会社員は「雇用契約に基づき、労働の対価として賃金を受け取る人」であり、法律上は労働者に該当します。
一方、個人事業主は「自ら事業を営み、得られた利益を収入とする人」です。雇われる立場ではなく、自身が経営者となってサービスや商品を提供し、対価を得るのが基本です。
この違いは、働く上での「責任の所在」と「権利の範囲」に直結します。例えば、会社員は労働基準法で労働時間や休日、残業代の支払いが保護されますが、個人事業主はこれらの保護の対象外です。逆に言えば、個人事業主は働く時間や場所を自分で決められる自由があります。
「自由に働けるなら個人事業主がいいかも…」と感じるかもしれませんが、収入の確保や顧客管理など、すべてを自分で行う覚悟が求められます。
責任と自由度の違い:安定性か裁量か
会社員は組織の一員として、決められた役割と範囲内で業務を遂行します。
そのため、仕事内容や働く時間・場所には制限があり、裁量の幅は比較的狭いことが多いです。一方で、給与の安定性や福利厚生、社会的信用といった「守られた環境」が整っています。
個人事業主は「何をするか・どうやるか」を自ら決定できます。これは大きな魅力ですが、売上が不調でも収入は自己責任です。また、税金や保険などもすべて自分で管理しなければなりません。
- 会社員の特性:
働く範囲が明確、リスクは少ないが裁量も少ない - 個人事業主の特性:
自由と裁量があるが、収入や労働環境は不安定になりやすい
「安定を重視したい」「家族を守りたい」方にとっては会社員の方が適しているケースもあります。
ライフスタイルに与える影響を比較
働き方の違いは、日々の生活リズムや将来設計にも大きく関わります。
会社員は就業時間が決まっているため、ライフスタイルが一定になりやすいです。休みも決まっており、計画が立てやすい一方で、急な用事や体調不良への柔軟な対応は難しい場面もあります。
個人事業主は時間や場所を自由に選べるため、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。子育てや介護と両立しやすいというメリットもあります。
ただし、自由がある分だけ「休みが取れない」「働きすぎてしまう」といったリスクも。特に収入が不安定な時期には、安心して休めない人も少なくありません。
- 会社員:生活リズムが安定。プライベートの計画が立てやすい
- 個人事業主:働く時間や場所を自分で選べるが、境界が曖昧になりやすい
「自由になりたいけど、実は自己管理が苦手…」という方は、慎重に検討するのが賢明です。
収入・税金・保険の観点から見た「どっちが得?」
「会社員」と「個人事業主」では、収入の安定性、税金の仕組み、社会保険や年金制度が大きく異なります。
「どっちが得か」は、一概に結論を出せるものではなく、自分の年収やライフスタイル、今後の働き方の意向に応じて判断する必要があります。
ここでは、それぞれの働き方が持つ具体的な金銭的メリット・デメリットを、収入・税金・保険の3つの視点から整理していきます。
収入の安定性と可能性:固定給と青天井の違い
収入面では、会社員は「安定性」、個人事業主は「可能性」に特徴があります。
会社員は毎月の給与が保証されているため、生活設計がしやすいというメリットがあります。景気変動の影響を受けにくく、ボーナスや昇給も制度として用意されている場合が多いです。一方で、どれだけ成果を上げても、収入の上限は役職や給与体系によって決まっており、「頑張った分だけ稼げる」という働き方ではありません。
これに対して個人事業主は、成果に応じて収入が増える可能性があります。取引先や仕事の幅を広げれば、年収1,000万円以上を目指すことも可能です。ただし、収入は不安定で、繁忙期と閑散期の差が大きい業種もあり、継続的な集客や契約が必要です。
「毎月の給与がないのは不安…」と感じる方も多いかもしれませんが、事業が軌道に乗れば、会社員よりも高収入を得られる可能性は十分にあります。
税金の仕組みと節税余地:サラリーマン控除 vs 経費計上
税制面では、個人事業主の方が節税の自由度が高く、所得が一定以上になると有利になるケースが増えてきます。
会社員は、給与所得控除という自動的な控除がありますが、自分で経費を申告することは基本的にできません。一方、個人事業主は事業に関する支出を「経費」として計上できるため、課税所得を大きく下げることが可能です。
たとえば、在宅ワークの家賃や通信費、打ち合わせ時の交通費や飲食代など、事業に関わる支出を経費として申告できます。さらに「青色申告特別控除(最大65万円)」や「専従者給与」の活用によって、所得税や住民税を抑えることも可能です。
ただし、節税には会計知識や帳簿管理が欠かせません。「申告が難しそう…」と感じる方は、最初は税理士に相談するのも一つの手です。
社会保険・年金制度の違いと将来への備え
保険と年金制度においては、会社員の方が制度上の保障が手厚いです。
会社員は厚生年金と社会保険(健康保険・介護保険)に加入しており、保険料の半分は会社が負担してくれます。さらに、病気や出産時の手当、傷病手当金などの制度も整っており、万が一に備えやすい仕組みです。
一方で、個人事業主は国民年金と国民健康保険に自ら加入する必要があり、保険料は全額自己負担となります。老後の年金受取額も、厚生年金に比べて少なくなる傾向があります。ただし、「小規模企業共済」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用することで、将来の備えを強化しつつ、節税にもつなげることが可能です。
「もし病気になったらどうしよう…」という不安がある方は、会社員としての保障の強さは見逃せないポイントになるでしょう。
メリット・デメリット一覧で比較!自分に合う働き方は?
「会社員」と「個人事業主」、どちらの働き方が“得”なのかは、単純な損得では語れません。
それぞれに異なるメリットとデメリットがあり、自分の価値観やライフスタイル、将来の目標に合った選択をすることが重要です。たとえば安定性を求めるなら会社員、自由度や成長機会を重視するなら個人事業主が向いているかもしれません。
以下で、会社員と個人事業主それぞれのメリット・デメリットを一覧形式で整理したうえで、どちらが自分に向いているかを判断するヒントを紹介します。
会社員のメリット・デメリットを整理
会社員には安定した収入や社会的信用といった強みがある一方で、自由度や裁量の面では制約が多い傾向があります。
- 安定した給与と福利厚生:定期的な給料やボーナスがあり、社会保険や有給休暇などの制度も整備されています。
- 社会的信用が高い:住宅ローンや各種審査で有利になりやすく、生活基盤を築きやすい特徴があります。
- 働く場所・時間が固定されやすい:勤務時間や勤務地が決まっており、自由な時間確保が難しい場合もあります。
- 昇給・昇進が会社次第:自分の努力だけでは報酬に直結しにくく、「やりがいを感じにくい」と感じることもあります。
- 副業が制限されることもある:会社の就業規則や風土によっては、副業に消極的な環境も少なくありません。
「会社のルールに縛られるのは窮屈かもしれない…」と感じる方もいるかもしれません。
個人事業主のメリット・デメリットを整理
個人事業主は自由度が高く、自分の裁量で働ける反面、安定性や保障面での不安も伴います。
- 働く時間や場所を自分で決められる:ライフスタイルに合わせて柔軟に働けるのは大きな魅力です。
- 成果が報酬に直結する:努力次第で収入を大きく伸ばせる可能性があります。
- 経費計上による節税が可能:事業に必要な支出は経費として扱えるため、税負担を抑えやすくなります。
- 収入が不安定になりやすい:固定収入がなく、月ごとの売上に波があるため、生活設計には工夫が必要です。
- 社会保険が手薄になる:国民年金・国民健康保険が基本で、保障内容が会社員に比べて限定的です。
- 事務作業や営業もすべて自己責任:確定申告や顧客対応など、事業に関するすべての責任を担います。
「自由に働ける分、プレッシャーも全部自分に返ってくるのかも…」と不安を感じる方もいるでしょう。
自分に向いているのはどちら?判断のポイント
どちらが“得”かを判断するには、自分の性格や価値観、そしてライフステージを照らし合わせて考えることが重要です。
- 安定を重視するタイプ:
安定収入・社会的信用・福利厚生を優先したい方は、会社員の方が安心感を得やすいでしょう。 - 自由と裁量を重視するタイプ:
時間や働く場所、やることを自分で決めたい方には、個人事業主という選択がフィットします。 - 変化に柔軟で自己成長意欲が強い人:
環境の変化や不確実性に適応できる人は、個人事業主での成功確率が高くなります。 - リスク回避志向が強い人:
失敗を避けたい、収入の波を許容できない方は、会社員のメリットが魅力に映るかもしれません。
あなたが「何を大切にしたいか」によって、“得”の意味が変わります。
焦らずに自分の価値観と向き合い、少しずつ理想の働き方に近づけることが、最も納得できる選択につながるはずです。
家族持ち・独身・シニア別に見る「最適な選択」
「会社員」と「個人事業主」のどちらが得かは、家族構成や人生のフェーズによって大きく変わります。
子育て中であれば安定性を重視する選択が求められますし、独身の若手であれば自由度や可能性を優先することも現実的です。また、定年を意識する年代では、リスクを抑えた副業的な始め方が安心材料になります。
ここでは、ペルソナ1〜3に対応した具体的な選択基準を解説します。あなた自身の立場に近い視点から、「自分にとっての得とは何か」を見つめ直すきっかけにしてください。
子育て世代(ペルソナ1)にとっての現実的な判断基準
子育て中の家庭では「安定」が何よりも大切です。
住宅ローンや教育費など、毎月の支出が決まっている家庭にとって、会社員としての固定給と社会保険の安心感は大きな支えになります。個人事業主になることで自由度や節税の可能性は広がりますが、それ以上に収入の不安定さや保険料の増加が家計を圧迫するリスクもあるため、慎重な判断が求められます。
特に以下のような点が判断基準になります。
- 安定した収入:毎月決まった給料がある会社員は、家族の生活基盤として安心材料になる。
- 社会保険の充実:厚生年金や扶養家族の保険加入など、会社員には家族に優しい制度が整っている。
- 住宅ローンの審査:個人事業主になると実績が必要になり、審査が厳しくなる傾向がある。
「家族を路頭に迷わせたくない…」という不安がある方も多いでしょう。その場合は、副業として始め、一定の収入が安定してから独立を検討するのが現実的なステップです。
独身女性(ペルソナ2)ならではの自由とリスク管理
独身女性にとっての「得」は、自己実現と柔軟な働き方のバランスにあります。
会社員は安定した生活を確保しやすい一方で、キャリアの自由度や自分らしい働き方を追求するには限界もあります。個人事業主として独立すれば、得意な分野に特化した仕事を選び、自分の裁量で働けるようになりますが、社会的信用や金銭面のリスクは無視できません。
以下の視点での比較が参考になります。
- キャリアの自由度:スキルやSNSでの発信力を活かせば、仕事の幅を自ら広げられる。
- 収入の上限なし:実力と努力次第で収入を増やせるため、成果がそのまま評価につながる。
- リスク管理がカギ:体調不良や契約切れのリスクもあるため、貯金や保険の備えが必要。
「自分のペースで働きたいけど、安定も捨てきれない…」というジレンマがある場合は、まず副業からスタートし、実績を積みながら独立を視野に入れる方法が最適です。
50代前後(ペルソナ3)のセカンドキャリア戦略
50代に差し掛かると、定年後の働き方をどう設計するかが重要になります。
長年勤めた会社での安定した立場は大きな資産ですが、将来的な年金不安や収入の減少を見据えると、副業や小規模事業の準備を始める人も増えています。個人事業主としての道を選ぶ場合でも、無理のない範囲で徐々に始めるのが現実的です。
以下の点を重視すると良いでしょう。
- リスクの少ない副業型:本業の傍ら、週末や平日夜に少しずつ事業を展開する。
- 専門知識の活用:長年の業務経験を活かして、コンサルや講師業として独立する選択肢もある。
- 社会保険の維持:会社員のまま副業することで、厚生年金や社会保険の恩恵を維持できる。
「今から転職するのは不安。でも、このまま定年を迎えるのも心配…」という気持ちの方は、退職前に準備を整えておくことで、無理のないセカンドキャリアを築ける可能性が広がります。
収入・手取り・税金…年収別シミュレーションで見る「得」
「会社員」と「個人事業主」では、同じ年収でも手取りや節税効果に大きな差が出ます。
収入の見かけだけで判断すると、実際の手取りで損をしてしまうこともあります。特に税金や保険料の違いは、年収の水準によって有利・不利が逆転するケースも少なくありません。「個人事業主は自由で稼げる」「会社員は手堅い」――そんな漠然とした印象ではなく、具体的な数字で比較することが、納得のいく判断につながります。
ここでは年収別に、会社員と個人事業主の手取りや税金の違い、副業スタート時の収支目安をシミュレーション形式で解説します。
年収400万円台で比較した場合の手取り差
年収400万円台では、会社員の方が手取りが安定しやすい傾向にあります。
会社員は「給与所得控除」という制度によって、税金の計算上の所得が圧縮されます。一方、個人事業主は事業収入から経費を差し引いた金額が課税対象になりますが、この年収帯では経費として大きく差をつけにくいため、結果的に課税所得が高くなりやすいのです。
例えば、年収(売上)420万円で必要経費が70万円の場合、個人事業主の課税所得は約350万円です。これに対して、会社員の場合は給与所得控除が約116万円(※国税庁「給与所得控除額の速算表」より)あり、課税所得は304万円程度になります。
また、社会保険料の差もあります。会社員は健康保険・厚生年金の半額を会社が負担するのに対し、個人事業主は全額自己負担となるため、手取りに影響が出やすくなります。
「フリーランスは節税できるって聞くけど…本当に得なの?」と感じる方もいるかもしれませんが、少なくとも年収400万円台では、会社員の制度的な恩恵が大きいのが現実です。
年収600万円以上での節税効果と実収入の違い
年収600万円を超えると、個人事業主の節税メリットが大きくなります。
この年収帯では、経費や青色申告特別控除(最大65万円)を活用することで、会社員よりも実質的な手取り額を高めることが可能になります。たとえば事業に必要なパソコン・ソフト・家賃の一部・通信費などを経費として計上できるため、課税所得を大きく圧縮できます。
仮に年収(売上)650万円で経費が150万円の場合、課税対象は約435万円。青色申告特別控除や基礎控除も差し引くと、課税所得はさらに低下します。対して、会社員の年収650万円では、給与所得控除は約174万円。課税所得は約426万円ですが、社会保険料を全額負担しない代わりに経費の自由度がありません。
さらに、個人事業主は「小規模企業共済」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などの節税商品をフル活用することで、所得控除の幅が広がります。
「努力次第で手取りが増やせるのは魅力だけど、不安定なのでは?」と思う方もいるかもしれません。確かに収入は安定しにくいですが、事業経費や控除を活かせば、会社員よりも自由度の高い資産形成が可能です。
副業から始めた場合の手残りと本業化の目安
副業で個人事業をスタートした場合、収入が少なくても手残りを意識することが大切です。
たとえば副業収入が年間60万円の場合、必要経費が20万円なら課税対象は40万円になります。この程度であれば、住民税や所得税は比較的軽微で済むため、本業の会社員収入に大きな影響はありません。ただし、合計所得が増えることで、社会保険料の等級や住民税額が変動する可能性はあります。
副業を本業化する目安の一つとしては、「会社員時代の手取りの7〜8割を、個人事業で安定的に稼げるかどうか」が現実的です。これは、社会保険料の自己負担や、信用面のデメリットをカバーするための水準です。
以下のような判断基準が参考になります。
- 月10〜15万円以上を継続的に稼げている:本業化の土台があると判断できる
- 取引先が複数あり、収入が一社に偏っていない:リスク分散ができている
- 税務や会計に関する知識がついてきた:自己管理力が高まり、独立後の不安が減る
「副業を本業にできたら…」という憧れを持っている方も多いでしょう。ただし、収入と支出のバランス、生活費のカバー、確定申告の手間などを具体的にシミュレーションしてから判断することが大切です。
個人事業主へのステップと必要な準備を知ろう
個人事業主になるには、いくつかの重要なステップと準備が必要です。最初に押さえるべきなのは、開業届や青色申告などの手続き、そして最低限の会計や保険に関する知識です。これらを知っておくことで、初期の不安やトラブルを回避し、スムーズにスタートが切れます。
「会社員から個人事業主になるのは大変そう…」と感じている方も多いかもしれません。しかし、実際には順序立てて準備をすれば、決して難しいものではありません。特に最近では、副業やフリーランス向けのサポートも充実しており、情報収集がしやすい時代です。
ここでは、個人事業主としての第一歩に必要な手続きや知識、また会社員のままできる副業スタイルについて解説します。
開業届や青色申告など、最初にやるべき手続き
開業時には「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出が基本となります。
まず、税務署に提出する「開業届」は、個人事業を開始した日から1カ月以内に提出することが原則です。これにより、正式に事業を始めたことが税務上認められます。
続いて、「青色申告承認申請書」を提出することで、最大65万円の控除や赤字の繰越など、税制面の大きなメリットを受けることが可能になります。こちらは原則として、開業年の3月15日まで、もしくは開業日から2カ月以内に提出が必要です。
「最初は白色申告で様子見でもいいのでは…?」と思う方もいるかもしれませんが、青色申告の方が節税メリットが大きいため、早い段階での導入をおすすめします。
事業用の銀行口座を用意して収支を明確に分けることも、会計処理の効率化に役立ちます。
最低限の会計・保険・届け出知識を身につけよう
個人事業主として活動するには、会計や保険の基本知識が欠かせません。
会計面では、帳簿づけ(仕訳帳・総勘定元帳など)と確定申告に対応するための準備が必要です。最近では会計ソフトの活用により、簿記の知識がなくても帳簿管理がしやすくなっています。
保険については、会社員が加入していた「社会保険」から「国民健康保険・国民年金」に切り替わります。特に国民年金は将来の年金額が少なくなる傾向があるため、付加年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用した補完策を検討しましょう。
また、事業内容によっては「開業後に必要な届け出」や「業種別の許認可」が必要な場合もあります。たとえば、飲食業なら保健所の許可、古物商なら公安委員会の許可が必要になります。
事前に市区町村や業界団体の情報を確認しておくことで、トラブルを避けることができます。
会社員のまま始める副業スタイルも視野に入れる
リスクを抑えながら個人事業主としての道を探るには、会社員のまま副業を始める方法が効果的です。
副業であっても「継続性」と「独立性」があれば、税務上は個人事業と認められ、開業届の提出や青色申告が可能になります。つまり、会社員の本業に支障がない範囲であれば、節税メリットも受けながら事業経験を積むことができるのです。
このスタイルは、「本業の安定」を活かしつつ、「副業の自由」で実績を作るという意味で、非常に現実的です。「急に独立するのは不安…」という人にとって、最も始めやすい選択肢でしょう。
実際、月5万円〜10万円程度の副収入を副業で得てから、徐々に本業化していく人も増えています。副業から始めることで、自分に合った働き方かどうかをじっくり見極めることが可能になります。
【体験談】会社員から個人事業主に転向したリアルな声
会社員から個人事業主へと働き方を変えた人のリアルな体験談は、「どちらが得か」を判断するうえで、非常に有益な情報となります。
制度の比較やシミュレーションだけでは見えにくいのが、働き方を変えたことで生まれた感情や生活の変化です。実際に決断し、行動に移した人の言葉には、具体的な判断材料とともに、心の揺れや新しい価値観の芽生えが表れています。
ここでは、会社員から個人事業主に転向した3つの実例を紹介します。それぞれ異なるライフステージや職業背景を持つ人物の経験から、「得」の本質について考えてみましょう。
筆者自身の脱サラ体験と得られた価値
筆者も会社員から個人事業主に転向した一人です。最初のきっかけは、年収の伸び悩みと、働く時間を自分でコントロールできないことへの違和感でした。
当時は医薬品業の派遣社員で、年収は約290万円。子どもが2人いる家庭では、生活に余裕があるとは言えず、「このまま定年まで今の生活を続けるのか」と将来に不安を感じていました。「もっと自由に働いて、自分で収入を作れる力を身につけたい」という思いから、副業でWeb制作を開始。半年間は土日をすべて使って準備を重ね、月収が本業を超えたタイミングで独立しました。
結果として、収入は月ごとに変動するものの、年間で見ると独立1年目から会社員時代の約2倍に。社会保険料の自己負担や経理作業の負担は増えましたが、それ以上に「時間を自分で設計できる」ことが何よりも大きな価値でした。
子持ち会社員が副業から独立した事例
38歳男性・製造業勤務、子ども2人という家庭持ちの方が、副業からの独立に成功した事例もあります。彼は本業の管理職として多忙を極めつつ、将来の教育費と住宅ローン返済への不安を抱えていました。
「副業をやってみたいけど、何から始めればいいのか分からない」という悩みから、副業支援のオンライン講座に参加。週末に副業としてWebライティングを始め、半年後には月5万円程度の収入に。子どもや配偶者の理解を得ながら段階的に時間を増やし、1年後には副業で月15万円を超えるようになりました。
本業と副業の両立は大変だったものの、「副業で収入が増えただけでなく、自分に自信がついた」と語っています。その後、会社の制度を活用して時短勤務へ切り替え、現在は個人事業主として独立に向けた準備を進めているとのことです。
IT企業勤務からノマド的働き方を目指した女性の例
29歳の女性・マーケティング職の方は、「会社に縛られない自由な働き方」を求めて、個人事業主としてのキャリアを模索し始めました。
彼女の職場は副業解禁ではあったものの、実際には保守的な雰囲気が残っており、「副業の話をすると浮くのでは…」という不安を抱えていたそうです。それでも、自分のスキルを活かすためにSNS運用代行やバナー制作を始め、週末の活動を積み重ねていきました。
最初の3カ月はクライアント獲得に苦労しましたが、ポートフォリオサイトを整備し、インスタグラムで実績を発信することで徐々に依頼が増加。会社員として働きながら副業で月10万円を稼げるようになり、独立に向けた資金計画を立てる余裕も生まれました。
「今はまだ会社員と個人事業主の“ハイブリッド”だけど、将来は場所にとらわれないノマドワークを実現したい」という彼女の姿は、多くの同世代の共感を集めています。
よくある誤解と気になる疑問に答えます【FAQ】
「会社員と個人事業主、どっちが得か?」と考える際、多くの方が抱える疑問や誤解があります。
特に「個人事業主は自由で稼げる」「社会保険が不利になる」「ローンが通りにくくなる」といった話は、断片的な情報だけで判断されがちです。
このセクションでは、そうしたよくある疑問について、事実に基づいてわかりやすく解説していきます。
「個人事業主は稼げる」は本当?現実とのギャップ
個人事業主は稼げる人もいますが、それはごく一部の成功例であり、必ずしもすべての人が高収入になるわけではありません。
実際、国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、個人事業主(白色・青色申告者含む)の平均所得は約200万円台後半で、会社員の平均給与約458万円(同調査)よりも低くなっています。
「自由で稼げる」は確かに魅力的ですが、その裏には次のような現実もあります。
- 収入が不安定:仕事の波や景気によって、月収が大きく変動することもあります。
- 営業や集客が必要:継続的に仕事を得るためには、自ら動いて営業活動をする必要があります。
- 全て自己責任:税務、契約、トラブル対応などもすべて自分で対処しなければなりません。
「時間や働き方を自由に選べる」という面では会社員よりも柔軟ですが、安定した収入や保障を求める方には厳しく感じられる場面もあるでしょう。
社会保険はどうなる?厚生年金との違い
個人事業主になると、原則として国民健康保険と国民年金に切り替わります。
一方、会社員は厚生年金と健康保険に自動的に加入しています。両者には次のような違いがあります。
- 保険料負担:
- 会社員:保険料の半分を会社が負担
- 個人事業主:全額自己負担
- 将来の年金額:
- 厚生年金は報酬比例で、将来の年金額が高くなる傾向があります
- 国民年金は一律の定額支給(2024年度は月約6.8万円)
「個人事業主になると社会保険が不利になるのでは?」と心配する声もありますが、収入に応じて任意加入制度やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの補完策を活用すれば、ある程度の備えは可能です。
ただし、家族を扶養している方や、出産・育児の保障制度を活用したい方は、会社員の方が制度面では手厚いといえるでしょう。
ローンや信用は不利になる?金融機関の評価視点
個人事業主は住宅ローンやクレジットカード審査において、会社員よりも審査が厳しくなる傾向があります。
金融機関は「安定した収入があるか」「継続して返済できるか」という観点で判断するため、以下の点で差が出やすいのです。
- 審査対象:
- 会社員:勤務先や勤続年数、給与明細などが評価される
- 個人事業主:過去2〜3年の確定申告書や事業実績が必要
- 開業直後は不利:開業から1年未満では、信用実績が足りずに審査が通らないケースもあります
- 見られるポイント:安定した事業収益、事業継続性、納税状況、借入状況などが重視されます
「個人事業主だとローンが組めないのでは…」と不安を感じる方もいますが、きちんと確定申告をして実績を積み重ねることで、信頼を得ることは可能です。
とはいえ、家族を持ち住宅購入を検討している方にとっては、会社員の方がスムーズに進む場面が多いかもしれません。
まとめ:「得か損か」は自分軸で判断しよう
今回は、会社員として働きながら将来に不安を感じている方に向けて、
- 「会社員」と「個人事業主」の働き方の違い
- 税金・保険・収入面の具体的な比較
- 年収別のシミュレーションと向き・不向きの判断基準
- 副業から始める現実的なステップ
- 筆者自身の脱サラ体験と得たもの
上記について、会社員から独立して個人事業主となった筆者の実体験を交えながらお話してきました。
本記事では、「どちらが得か」は一律に語れず、自分の価値観やライフステージに応じて見極める必要があるという結論に至りました。
今回得た知識を活かせば、将来の不安を減らし、あなたにとって納得できる働き方を選ぶための一歩を踏み出せるはずです。
まずは副業から始めたり、年収別の手取り比較をシミュレーションしてみることで、より現実的な判断ができるようになりますよ。